クルアーンは反ユダヤ主義なのか(後半):契約の遵守

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説明: クルアーン、イスラーム、そしてムスリムが反ユダヤ主義だという主張の概観。後半:選民とは、いかなる人々のことをいうのでしょうか。

  • より M.アブドッサラーム (ゥ 2011 IslamReligion.com)
  • 掲載日時 21 Nov 2011
  • 編集日時 21 Nov 2011
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戒律を守ることに対する神の恩寵

既述されたように、古代イスラエル人に対する神の恩寵は、彼らが神と結んだ契約を守るという前提で与えられていました。この事実は、ユダヤ人たち自身によっても述べられています:「我々によるトーラーの受容によって、我々ユダヤ人は神にとって特別な地位が与えられているが、我々がトーラーを破棄したとき、その地位は失われてしまうのである。」1

それゆえ、神の恩寵とは人種的な見地から来るのではなく、永久に続くものでもないことが分かります。実際には、戒律を遵守する者にこそその恩寵が与えられるのです。戒律を守らないイスラエル人は、こうした恩寵に沐することはありません。

神との契約を破ったユダヤ人

神はクルアーンの様々な箇所において、ユダヤ人が宗教上の数々の罪悪により、神との契約を反故にしたことを言及しています。それらの罪悪とは、誤信に陥ったり、神に同位者を配して崇拝したり(十戒の違反2)、彼らの都合の良いようトーラーを改変したり、意味をすげ替えたりといったものでした。3神はその慈悲から、彼らを正しき道に戻すため、諸使徒を遣わし続けました。諸使徒がラビたちにとって好ましくないものをもたらすと、彼らは神の諸使徒に従うどころか拒絶し、殺害さえしました。これは明らかに神への不信仰から来るものであり、こうして神の恩寵は彼らから遠ざけられたのです。神はクルアーンにおいてこのように述べています:

“かれら(ユダヤ人)はどこに行っても、屈辱を受けるであろう。神から(保護)の聖約を授かるか、人びとと(攻守)の盟約をしない限りは。かれらは神の怒りを被むり、貧困に付きまとわれよう。これはかれらが、神の印を信じずに、正義を無視して預言者たちを殺害したためである。これはかれらが反抗して法を越えていたためである。”(クルアーン3:112)

ユダヤ人が諸使徒を殺害したことは、バイブルの第一テサロニケの信徒への手紙2:15、使徒行伝7:52によっても述べられています。また、ローマの信徒への手紙11:3においても、預言者エリヤがイスラエル人たちに関して主にこう嘆願したことが分かります:

“主よ、彼らはあなたの預言者たちを殺し、あなたの祭壇を壊しました。そして、わたしだけが残りましたが、彼らはわたしの命をねらっています。”

これらの罪の中でも最も重大なものは、ユダヤ人に対して遣わされた明確な印であり、奇跡でもあったイエスの拒絶です。この預言者を通して、民族としてのユダヤ人に対する神の恩寵は、怒りと懲罰に置き換えられたのです。「選民」として残った唯一のユダヤ人たちは、イエスに従った、後のナザレ派のキリスト教徒たちでした。4

キリスト教徒は神の選民なのか

ユダヤ教徒とは異なり、キリスト教徒とムスリムが合意する事実には、神の寵愛が特定の民族に限定されるものではなく、神との契約を守る者に対してのものであるということがあります。イエスはユダヤ人たちに遣わされましたが5、キリスト教は歴史を通し、自らを全人類に向けた宗教であると見なして来ました。キリスト教徒たちは、イエスの教えを受け入れる者は誰しも神の愛、慈悲、恩恵を受けますが、拒否するものは地獄に落ちる運命であるとします。

ムスリムもこの点に関しては同意しますが、現実問題として、イエスは追従者たちに対してユダヤ教の戒律を守るよう命じています。それはつまり、神のみが崇拝に値するというものであり、キリスト教徒たちはこのイエスの教えを実際には守っていません。キリスト教徒がイエスを崇拝し、彼に神性を帰属させたことが、神の怒りを招き、寵愛を逃した理由のひとつなのです。

その他の人々への懲戒

クルアーンにおいてユダヤ人が懲戒されている節を分析してみると、既述したように、そこでは彼らが破った特定の戒律を中心に展開していることが分かります。そして特定の懲罰が彼らに対して割り当てられたのです。こうした懲戒はユダヤ人だけに対するものではなく、クルアーンとスンナによって、ムスリムをも含む、神の戒律を破った歴史上の者すべてに広く適用されています。神は、他のムスリムを意図的に殺害したムスリムに関してこう述べます:

“だが信者を故意に殺害した者は、その応報は地獄で、かれは永遠にその中に住むであろう。神は怒ってかれを見はなされ、厳しい懲罰を備えられる。”(クルアーン4:93)

クルアーンにおいて見出すことの出来るこれらの節々は、神の戒律を破るあらゆる人々に対して語りかけているものであり、それは特定の民族や人種に対するものではありません。同様に、神による選好と寵愛を受けることの出来る唯一の要素とは、信仰深くあることなのです。自らの宗教に忠実なユダヤ教徒、キリスト教徒、そしてその他すべての人々は、皆天国に行くことが神によって述べられています:

“本当に(クルアーンを)信じる者、ユダヤ教徒、キリスト教徒とサービア教徒で、神と最後の(審判の)日とを信じて、善行に勤しむ者は、かれらの主の御許で、報奨を授かるであろう。かれらには、恐れもなく憂いもないであろう。”(クルアーン2:62)

しかし、自らの宗教の戒律に従わず、イスラームを信じない人々は、地獄が運命付けられます。なぜならイスラームは、預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)に下された神による最終啓示であり、神によって認められている唯一の宗教であるからです。

“啓典の民の中(真理を)拒否した者も、多神教徒も、地獄の火に(投げ込まれ)て、その中に永遠に住む。これらは、衆生の中最悪の者である。”(クルアーン98:6)



Footnotes:

1  (http://www.jewfaq.org/gentiles.htm)

2 出エジプト記32、クルアーン7:148。

3 クルアーン2:75。

4 使徒行伝24:5で、テルティロはパウロのことを「ナザレ人の分派の主謀者」であると言いましたが、実際にはナザレ派教会は初代エルサレム主教の「義人ヤコブ」によって取り仕切られたものでした。

5 マタイ15:24:“イエスはお答えになった。「わたしはイスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていないのだ。」”

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