果たされぬままの挑戦

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説明: 預言者時代のアラブ人、近代アラブ人、さらには非アラブ人が、クルアーンによる挑戦、つまりそれ相当のものを創作することに関していかに無力であったかについて。

  • より IslamReligion.com
  • 掲載日時 28 Mar 2011
  • 編集日時 03 Sep 2012
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証拠

An_Unmet_Challenge_001.jpgマッカの不信仰者たちは当初、ムハンマドがクルアーンの著者であると主張していました。それに対し、神はこのように述べています:

“または、「彼がこれを捏造したのである。」とでも言うのか。いや、彼らは信じてはいないのである。もし彼らの言葉が真実(であり、これが単なる人間の制作物であると言うの)なら、これと同じような御告げをもってこさせるがよい。(それとも彼らは神の啓示を否定することによって神の存在を完全否定するのか?)彼らは無から創られたのではないか。それとも彼ら自身が創造者なのか。”(クルアーン52:33−35)

まず、神は彼らにクルアーンと同じような複数の章を創ってみるよう挑みました:

“また彼らは言う。「彼がそれ(クルアーン)を捏造したのだ。」言え。「それと同様の10の章でもよいから、偽造して持って来てみよ。そしてあなたがたが本当のことを言っているのなら、あなたがたがそうすることの出来るアッラー以外の何かに(そこにおける援助を)祈願してみるがよい。」もし彼ら(神々)があなたがた(の呼びかけ)に応じないのならば、あなたがたはそれが神の御知識からだけ下されたものであること、また彼の他に神はないことを知りなさい。それであなたがたは、心から(イスラームへと)帰依するのか。”(クルアーン11:13−14)

しかし彼らがその挑戦を果たせずにいると、神はその挑戦を一章だけに軽減されました:

“もしあなたがたが、わがしもべ(ムハンマド)に下した啓示を疑うならば、それに類する1章でも作ってみなさい。もしあなたがたが正しければ、神以外のあなたがたの証人を呼んでみなさい。もしあなたがたが出来ないならば、いや、決して出来るはずもないのだが、それならば、人間と石を燃料とする地獄の業火を恐れなさい。それは不信仰者のために用意されている。”(クルアーン2:23−24)

そして神は最終的に、彼らにはその挑戦を永久に果たすことが出来ないことを予告するのです:

“言え。「たとえ人間とジン1が一緒になって、このクルアーンと同じようなものを創り出そうと総力を挙げて協力しても、(到底)このようなものを創ることは出来ない。」”(クルアーン17:88)

預言者ムハンマドは言いました:

“すべての預言者は、人々を信じさせる‘みしるし’を与えられたのである。実に、私は神によって下された啓示を授けられたのだ。それゆえ復活の日、私にはいかなる預言者よりも多くの追従者がいることを期待している。”(サヒーフ・アル=ブハーリー)

諸預言者によって行なわれた奇蹟は、その時代に限定されたものであり、それを直接目撃した人々にだけ有効でしたが、聖クルアーンという継続する奇蹟は、他のいかなる預言者にも与えられなかったのです。その言語学的な卓越性、様式、メッセージの明確性、議論の説得力、修辞の質、そして人間にはその最短の章でさえ似通ったものを創り出すことが出来ないという事実が、この上ない独自性をもたらしているのです。啓示を目撃した人々、そしてその後の人々は共に、同じ英知の源泉から知識を得ることが出来ます。これこそが、預言者ムハンマドが最も多くの追従者を期待した理由なのです。また彼は人々が大挙してイスラームの教えを受け入れることも予言しており、それは本当に実現しているのです。

クルアーンの無類性に関する説明

預言者ムハンマドの状態

彼は普通の人間でした。

また彼は文盲でした。つまり彼には読み書きが出来ませんでした。

彼が最初の啓示を受け取ったのは、彼が40歳を過ぎてからでした。それ以前も彼は演説者、詩人、または文芸家などとして知られていた訳でもありませんでした。彼は普通の商人だったのです。彼は預言者として選ばれるまでは、詩の一節すら書いたこともなければ、演説一つしたこともなかったのです。

彼は神へと帰属される書をもたらし、当時のアラブ人たちは皆、その無類さに同意したのです。

クルアーンによる挑戦

クルアーンは預言者を拒否する人々全員に挑戦を挑みます。その挑戦とは、たとえ力を合わせてでも、それに似通った章(スーラ)を一章でも創り出すことです。つまり挑戦を受ける人物は物理的、そして精神的世界からあらゆる助けを得てそれに取りかかっても良いのです。

このような挑戦の理由とは?

まず、当時のアラブには詩の文化がありました。詩は彼らにとって最高の装飾品であり、最も優れた表現方法でした。アラビア語の詩は、口語にそのルーツを辿ります。それは、アルファベットを獲得する前の「声」だったのです。詩人たちは難解な詩を即興で作り上げ、何千もの句の暗記を徳としました。アラブ人たちは詩人とその詩への評価に対する、厳格な基準を満たすための複雑なシステムを有していました。年に一度の大会では、詩における‘アイドル’を選び出し、それらは金に刻印され、その他の偶像と共にカアバ聖殿の中に吊るされたほどでした。また詩に最も精通した者が、彼らの審判員として批評しました。詩人たちには戦闘を勃発させることも、部族間の和平をもたらす力もありました。彼らに女性、酒、戦いを語らせると右に並ぶ者はいなかったのです。

次に、預言者ムハンマドの敵対者たちは、いかなる手段に訴えてでも彼の目的を妨害しようと強く決意していました。神は、彼らに非暴力によりムハンマドを論駁する機会を与えました。

挑戦を果たすことに対する無能さの露呈、またそれがもたらした結果

イスラーム以前のアラブ人たちが、クルアーンに類似するようなものを一章たりとも制作することが出来なかったことの証人は、歴史です。2その代わりに、彼らは暴力に訴え、彼に対しての戦争を遂行しました。彼らにはクルアーンの挑戦を受ける能力と動機があったにも関わらず、そうすることが出来なかったのです。もしも仮に彼らがそうしたのであれば、クルアーンは偽りであること、そしてそれをもたらした男は偽預言者として暴かれたかも知れなかったのです。当時のアラブ人たちがそうしなかったのは、いやそう出来なかったのは、クルアーンの無類性の証明です。それはまるで、井戸の傍らにいる飢えた男性が、その渇きによって死んだ唯一の原因が、水に到達することが出来なかったという例えに表すことが出来るでしょう。

さらに、以前のアラブ人たちがクルアーンによる挑戦を果たすことが出来なかったことは、後世のアラブ人たちがそれを達成するのはさらに困難であることを意味します。というのも、彼らの文学的能力は、過去のアラブ人の持っていた古典的アラビア語の精通度にはとても及ばないためです。アラビア語の言語学者たちによれば、預言者の時代とそれ以前のアラブ人たちは、その直後の数世代を除いて、最も完全に言語学的法則、韻律、押韻などに熟達していたとされています。後世のアラブ人たちは、伝統的アラブ人たちの精通度には到底及ばなかったのです。3

最後に、アラブ人たちへの挑戦は、そのまま非アラブ人へも適用されることが指摘されなければなりません。もしアラブ人たちにその挑戦が果たせないのであれば、アラビア語非話者もそれを果たすことが出来ないことを意味します。それゆえ、クルアーンの独自性は非アラブ人に対しても確立されることになります。

もし誰かがこのように言ったとしましょう:「恐らくはクルアーンの挑戦が、ある人物によって預言者の時代に果たされたが、歴史の1ページにそれが刻まれなかっただけではないのだろうか?」

人類の起源から、人々は重要な出来事を次世代へと伝え続けて来ました。特にそれは人々の注目を引きつけるような事柄、または人々の探し求めるような情報に関しては当てはまります。クルアーンの挑戦は当時の人々の間に広まり、知れ渡りました。そしてもしそれが果たされたのであれば、その事実が私たちに知られないことは不可能であるといえるでしょう。しかし、たとえそれが歴史の史料から失われたのだとしても、可能性としては更なるモーゼ、イエス、ムハンマドがいたかもしれないのです。つまりそれらの想像上の預言者たちには更なる啓典が下されていたのかも知れず、世界がそれに関して全く無知でいる可能性もあるのです。そういった推測が歴史において根拠の無いように、クルアーンの挑戦が果たされたことが私たちに伝えられなかったと想像することも同じように非論理的であるといえるでしょう。4

次に、もしも彼らが挑戦を果たしたのであれば、アラブ人たちは預言者の信頼性を失墜させようとしたはずです。それは彼らにとって最も強力な対預言者プロパガンダの道具になり得たのです。このような出来事は全く起こっておらず、その代わりに彼らは戦争という道を選びました。

非ムスリムによる、‘クルアーンに類似した一章’を創り出すいかなる努力も実らなかった事実からは、誰一人として努力に値する程の価値をクルアーンに見いださなかったか、もしくはその努力をしたにも関わらず成功に及ばなかったかのどちらかであるといえるでしょう。ここからもクルアーンの無類性、そしてその際立った永遠のメッセージ性が浮き彫りにされます。クルアーンの独自性に加え、その神からの人類へのメッセージは、イスラームが真実であるという確かな兆候なのです。この事実により、すべての人々は二者択一の内の一つを選ぶことになります。そしてそれはクルアーンが神の言葉であることを公に認めることなのです。それと同時に、ムハンマドが神による御使いであり、神の使徒であることも認めなければなりません。そうでなければ、それはクルアーンが真実であることを密かに知ってはいるが、心ではそれを拒否するという選択をすることになるからです。もし探求者がその探求において誠実なのであれば、クルアーンの無類性に関する疑問を追求することにより、宗教の最終的な真理を発見したという内なる確信を育むべきなのです。



Footnotes:

1 人類と平行して存在する不可視の存在のこと。

2 この事実はノンムスリムの東洋学者らによって真正であることを証明されています。

‘最も優れたアラブ人作家たちでさえ、クルアーンの価値に見合うようなものを作製することが出来なかったこと自体は、驚くべきことではない・・・’(E H Palmer (Tr.), The Quran, 1900, Part I, Oxford at Clarendon Press, p. lv)

‘・・・そして1500年間に渡り、誰一人としてムハンマドの行なったような重厚な旋律の器具をもって、力強く、大胆に、かつ広範囲に渡り精神的影響を及ぼした人物はいなかったのである・・・アラビア語文学においても独特な、文学的金字塔としてのクルアーンは、それゆえに自らを際立たせ、その形式においても先駆者と後継者がなかったのである・・・’(H A R Gibb, Islam - A Historical Survey, 1980, Oxford University Press, p. 28)

またアラブ人キリスト教徒もこう述べます:

‘多くのアラブ人キリスト教徒たちは、その様式に対し暖かな称賛を送り、大半のアラブ研究家たちもその卓越性を認めています。それが声に出して朗読、または朗誦されると、その奇抜なシンタックスや私たちにとって時に不快な内容があるにも関わらず、まるで催眠術のような効果をもたらします。それに対する批判を沈黙させるような甘美な言語の音色は、比類なき教義を誕生させたのです。実に、アラブ人たちによる広範かつ多産な文学の範疇内において、詩文としても高尚な散文としても、それに比較し得るものは何一つとしてないのです。’(Alfred Guillaume, Islam, 1990 (Reprinted), Penguin Books, pp. 73-74)

3 学者ルンマーニー(ヒジュラ暦386年没)はこう記しています:‘よって、もしも誰かがこう言ったとしよう:“あなたは御自分の議論において、近代アラブ人たちを念頭に入れることなく、ベドウィン・アラブ人たちの失敗に信頼性を置いています。それにも関わらず、あなたによればクルアーンは奇蹟の最たるものであると述べます。近代アラブ人たちからはスピーチの卓越性を見いだすことが出来ます。”この返事としてはこう言うことが出来るでしょう:“ベドウィンたちには完全なアラビア語文法の構造がもたらされ、またそれを駆使することが出来ましたが、近代アラブ人たちに関しては誰もその完全な言語構造を使いこなすことが出来ませんでした。ベドウィンたちは巧みに言語を操り、その使用においてより力強かったのです。彼らにはクルアーンの模倣をすることが出来なかったことから、近代アラブ人たちにとってはその失敗がさらに顕著でなければならないはずです。”(Textual Sources for the Study of Islam, tr. and ed. by Andrew Rippin and Jan Knappart)

4 この議論はアル=ハッタービー(ヒジュラ暦388年没)によるものです。

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