預言者ヨナ
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 06 Jan 2014
- 編集日時 06 Jan 2014
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預言者ヨナ1は、イラクの共同体に対して遣わされました。イスラーム学問の顕学イブン・カスィールは、そこがニネベであるとしています。他の預言者たち同様、ヨナはニネベの人々を、唯一なる神への崇拝へと呼びかけました。彼は、共同者・子女・同位者なき神について語り、人々が偶像を崇拝したり、悪態をついたりすることを改めるよう求めたのです。しかし、人々は彼の言葉に耳を貸そうとはせず、ヨナの忠告を無視しました。彼らは預言者ヨナに苛立っていました。
人々の振る舞いはヨナを憤慨させ、彼はその地を去ることに決めました。彼は、神が彼らの傲慢な態度に懲罰を与えるだろうと最後の警告を発しましたが、人々は嘲笑し、そんなことを怖れてなどはいないと言い放ちました。ヨナの心は、愚かな人々への怒りに満ち溢れました。彼は人々を悲惨な運命のなかに放っておくことにしました。ヨナはいくばくかの荷物をまとめ、人々から可能な限りの距離を離れることにしました。
“…かれ(ヨナ)が激怒して出かけた時を思いなさい。”(クルアーン21:87)
イブン・カスィールは、ヨナが去った直後のニネベの様相について説明しています。空の色は、炎のような赤色に変化しました。人々は恐怖におののき、破滅が目の前まで迫ってきていることをようやく理解しました。ニネベの全住民は山頂に集い、神の赦しを請い願いました。神は彼らの悔悟をお受け入れになり、彼らの頭上を覆っていた不吉な兆候を取り除かれました。空は元通りになり、人々はそれぞれの家に帰宅しました。彼らはヨナが戻り、人々を正道へと導いてくれるよう祈りました。
その間、ヨナは船に乗り、人々から出来る限り遠ざかろうとしていました。何人かの乗員を乗せた船は、穏やかな海に向けて出航しました。すると辺りが暗くなり、天候が急変しました。猛烈な嵐による強風が吹き荒れると、船は揺さぶられ、今にも崩壊せんばかりでした。乗員たちは暗闇の中、船べりから海へと荷物を放り投げましたが、それは何の変化ももたらしませんでした。乗員たちは船の重量に問題があると考え、くじ引きをして乗員の一人を船外に放り投げることにしました。
波は山のように大きく、暴風は船をあたかも小枝のように軽々と上下させました。全員の名前を書いたくじを引き、乗員の一人を船外に放り投げることは船乗りたちの伝統でした。くじが引かれ、ヨナの名前が当たると、乗員たちは戸惑いました。ヨナは謹厳実直な者として知られており、彼らはヨナを荒れ狂う海に放り投げることをためらいました。彼らは再三くじを引きましたが、ヨナの名前が繰り返し引かれたのです。
神の預言者であるヨナは、それが偶然ではないことに気付きました。彼はそれが神によって定められた運命であることを理解し、乗員たちに目をやると、自ら船を飛び降りたのです。海面に落ちたヨナが、巨大な魚によって飲み込まれるのを目撃した乗員たちは、思わず息を飲みました。
ヨナは意識を取り戻すと、彼は自分が死んで、墓の中にいるのだと思いました。彼は周りを探り、そこが墓の中ではなく、巨大な魚の腹の中であることに気付きました。彼は怖れました。彼の心臓は動悸を早め、息を吸い込むごとにそれが喉に迫ってくるような感覚に捕らわれました。ヨナは、皮膚を焼くような強い酸性の胃液の中に座っており、神の助けを求めて叫びました。魚の中の暗闇、海の暗闇、そして夜の暗闇の中で、ヨナは神にすがったのです。
“あなたの外に神はありません。あなたの栄光を讃えます。本当にわたしは不義な者でした。”(クルアーン21:87)
ヨナは神へと祈り、嘆願し続けました。彼は自身の過ちを認め、神の赦しを請い願ったのです。預言者ムハンマドは、神を想念し続ける人物には、天使たちが近寄ってくることを私たちに告げています。それが、預言者ヨナに起きたことでした。天使たちは暗闇の中の彼の叫びを聞きつけ、彼の声に気付いたのです。彼らは預言者ヨナと彼の逆境における立派な態度を知っていました。天使たちは神にこう言いました。「あの声は、あなたの忠実なしもべのものではありませんか?」
神はそうだと述べました。神はヨナの呼びかけを聞き、彼を救い出したのです。ヨナは安楽の時においても神を想念していたため、神は苦難の時においてヨナを見捨てはしなかったのです。ヨナの行った祈願は、苦難における祈願として、誰によって行うことも出来ます。神はクルアーンにおいて、かれがヨナを救ったように、信仰する者を救い出すと述べています。(クルアーン21:88)
神の命により、巨大な魚は浮かび上がり、ヨナを岸辺に吐き出しました。ヨナの身体は胃液によって火傷を負っていました。彼の皮膚は日光や風に耐えることが出来ず、ヨナは苦痛からの保護を請い願って叫びました。彼がその祈願を続けると、神は木のつるを彼の周りに伸ばし、それはヨナを自然要素から護り、食物を供給しました。ヨナが徐々に回復すると、彼は人々の元に戻り、神によって定められた使命を果たすことを決意しました。
“本当にユーヌスも、使徒であった。かれが(荷を)満載した舟に(乗って)逃れた時、かれは籤を引いて、負けてしまった。(そして海に投げ込まれると)大魚に丸呑みにされ、かれは自責の念にかられた。かれが(悔悟して主を)讃えなかったならば、かれら(人びと)が(復活して)起こされる日まで、必ずかれは魚の腹の中に留まったであろうだがわれは、荒れ果てた(岸辺)にかれを打ち上げた。かれは病んでいた。われはかれの上に、1本のヒサゴ木を繁らせ(影を作った)。そして10万人、またはそれ以上(の民)にかれを遣わした。かれらが信仰に入ったので、われはしばし現世の享楽を許した。”(クルアーン37:139−148)
回復してニネベに戻ったヨナは、人々の変貌ぶりに驚愕しました。彼らはヨナに、血のように真っ赤に染まった空に恐怖し、山に集って神の赦しを嘆願したときのことを告げました。ヨナは人々に唯一なる神の崇拝、そして敬虔で実直な生き方を説き、10万人のニネベの人々は、束の間の現世の平和を享受しました。
預言者ヨナの逸話は、私たちに逆境における忍耐を教えます。それは、順境か逆境かに関わらず神を忘れないこと、そして人生を通してそうすることを教えるのです。私たちが若くして神を忘れなければ、かれは私たちが老いても私たちのことお見捨てにはならず、私たちが健康なときに神を忘れなければ、かれは私たちが病気や悲しみ、衰えの時でもお見捨てにはならないのです。苦難とは、真摯に神に向かい合うことのみによって和らげられるのです。
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