イスラームにおける罪と罰(1/5):概要
説明: 社会の犯罪に対し、イスラームが定めた規定の詳細について説明します。第一部:犯罪に対するイスラーム的対策とその概要。
- より アブドッラフマーン・アル=ムアラー博士編集部
- 掲載日時 08 Nov 2010
- 編集日時 14 Oct 2021
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安全と安定は、衣食に勝るとも劣らない、人間が必要とする最低限のニーズです。安全と安定を抜きにして、人が日常生活を送ることは出来ませんし、新たなアイデアや高いレベルの文化発展を生み出すことが出来ません。
人類は地球上に生を受けたその時から安全の確保を意識しており、多くの方法によってその必要性に対する意識を表\現します。人間社会の形成と発展と共に、人は国家の樹立および法の整備を通してこの意識を表\現してきました。それが達成されたのは、公共安全の保証、社会を危機に陥れる論争や衝突の解決、そして自国の安全を脅かす他国の存在といった諸要素のためです。これら人定法は長い試行錯誤の過程を経て、過去数世紀に初めて完成されたのです。
対照的に、イスラーム法は神による人類への最後のメッセージとして、完全な形としてムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)に下され、その形をなお保ち続けています。イスラーム法はこの件に関してこの上ない配慮を示しており、完全なる法体系を提供しているのです。それは社会において常に変化する情勢、また不変かつ永続的な人間性に関しても念頭に入れています。従ってそこには普遍的原則のみならず、人生におけるありとあらゆる諸問題に対処することの出来る、時間と空間に囚われることのない包括的規定が含まれているのです。同様に、特定の犯罪に対しては状況や環境の変化に影響のされない、不変の罰則が規定されています。このような方法によってイスラーム法は安定性、柔軟性、そして堅固性を兼ね備えているのです。
イスラームはどういった角度から犯罪対策のアプローチをするのか?イスラーム的刑法が根拠とする原則は何か?この刑法の際立った特徴とは?犯罪対策として用いられる手段にはどのようなものがあるのか?イスラームにおける罰とはどういった性質のものなのか?そしてそれらが施行される目的とは?・・・これらの質問に、答えていきましょう。
犯罪対策へのイスラーム的アプローチ
あらゆるイスラーム的訓令は、清廉な社会を築くことによって、全人類の現世と来世の為の福祉を確保することです。これこそは神を崇め、地上において繁栄し、すべての人々が平和、正義、安全に基づいた暮らしを送ることが出来る文明を構\築するために自然の力を掌握する社会なのです。この文明は人の精神的、知的、物質的要求を満たし、人の存在としてのあらゆる側面を養います。この究極の目的は、クルアーンにおいて多くの箇所で強調されています。神は仰せられています:
“実にわれらは明証を授けて使徒たちを遣わし、また彼らと一緒に、啓典と(正邪の)秤を下した。それは人々が正義を行うためである。またわれらは鉄を下した。それには偉大な力があり、また人間のために種々の便益を供する・・・”(クルアーン 57:25)
かれは仰せられています:
“・・・神はあなたがたに易きを求め、困難を求めない・・・”(クルアーン 2:185)
また、かれは仰せられています:
“神はあなたがたに(掟を)解明して、あなたがた以前の者の慣行に導こうとなされ、あなたがたの悔悟を許すよう望まれる。神は全知にして英明であられる。神は、あなたに対し悔悟を赦そうと望まれる。だが自分の欲望に従う者たちには、片寄った上にも、大きく片寄り去るよう望まれる。(また)神は、あなたがた(の負担)を軽くするよう望まれる。人間は(生れ付き)弱いものに創られている。”(クルアーン 4:26−28)
かれは仰せられています:
“本当に神は公正と善行、そして近親に対する贈与を命じ、またすべての醜い行いと邪悪、そして違反を禁じられる・・・”(クルアーン 16:90)
イスラーム的訓令は人類の福祉を達成することを目的とするため、それらすべては人類福祉の確保に必要な普遍的原則にその源泉を見出すことが出来ます。それらの普遍的原則とは、以下の通りです:
1.生命の保護
2.宗教の保護。
3.理性の保護。
4.血統の保護。
5.財産の保護。
イスラーム的刑法は、これら五つの普遍的要求の保護を目的としています。生命の保護にあたっては報復法を規定していますし、宗教の保護にあたっては背教罪を、理性の保護にあたっては飲酒罪を、血統の保護にあたっては姦通罪を、そして財産の保護にあたっては窃盗罪を定めているのです。またこれらすべてを保護するため、公道上の強盗罪も定められています。
それゆえ、イスラームが諸犯罪に特定の処罰を定めている理由は、以下によって明白になります。
1.生命の侵害(殺人または暴\行)。
2.財産の侵害(窃盗)。
3.血統の侵害(姦通と、姦通の冤罪による被害)。
4.理性の侵害(酩酊作用をもたらすものの使用)。
5.宗教の侵害(背教)。
6.これら普遍的要求すべてに対する侵害(公道上の強盗)。
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