古代イスラエル王国(3/6):預言者ダビデ
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 08 Jul 2013
- 編集日時 08 Jul 2013
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サウル王は、彼の軍隊が敬虔かつ強靭な意思を持つ者たちから構成されることを確信させるため、彼らにいくつもの試練を課しました。軍隊編成当初の8万人から、ゴリアテ率いるペリシテ人と直接対峙したのは僅か300人でした。ゴリアテはサウル軍に対して一騎打ちを挑戦しましたが、それに応じた唯一の者はダビデという名の小さく俊敏な少年でした1。彼以外には誰一人として挑戦を受けて立つものがいなかったため、サウル王はダビデ少年が巨大なゴリアテと戦うことを許しました。ゴリアテは少年を前にすると大声で笑い、サウル軍の兵士たちでさえも、それを信じられないといった表情で見守ったのです。
サウル王はダビデに鎧と武器を装備させようとしましたが、少年はそれを拒みました。彼はかがみこんで一握りの小石を拾い上げ、肩にかけた革袋に詰め込みました。ぱちんこで武装したダビデは、ゴリアテに向き合いました。サウルは心配しましたが、ダビデは過去に、父の羊の面倒を見ていた際、熊とライオンによる襲撃から守られたことを彼に告げて安心させようとしました。ダビデはこの巨大で粗暴な男に直面しているそのときも、神は再び彼を守ってくれるという確信を持っていました。
ゴリアテは、ぱちんこだけを手にしたこの痩せた少年に目をやり、高笑いしました。ダビデは落ち着いて袋から小石を取り出すと、ぱちんこを構え、的を定めました。小石は狙い済ました弓矢のような速さと精確さで両陣営の間を飛び抜け、ゴリアテの頭に強烈な一撃を与えました。彼は傷口から血を吹き出させてよろめき、剣を引き抜く間もなく地面に倒れて絶命しました。ゴリアテの背後にいた軍隊は恐怖に息を飲み、その事実を信じることも出来ず、戦場を背にして敗走しました。イスラエルの民は一斉に前進し、ペリシテ人に奪い取られた名誉を奪還したのです。
“果たしてかれら(サウルの軍勢)は、アッラーの許しのもとにかれらを打ち破り、ダーウード(ダビデ)はジャールート(ゴリアテ)を殺し、アッラーは、王権と英知をかれ(ダビデ)に授け、かれのおぼしめしに就いて教えられた。アッラーが人間を、互いに抑制し合うように仕向けられなかったならば、大地はきっと腐敗したことであろう。だがアッラーは、凡てのものに恵みをくださる。”(クルアーン2:251)
預言者ダビデの奇跡的特質
ゴリアテと戦った当時、ダビデはまだ預言者ではありませんでしたが、サウル王と預言者サムエルの死後、彼は預言者となり、王国が与えられました。神はダビデにイスラエルの民を正道へと導き、唯一なる神を崇拝させることを可能とさせる英知と知識を与えました。神はすべての預言者たちに彼らの預言者性を証明させる特質を与えており、預言者ダビデにも奇跡や独特な性質が与えられていました。ダビデのそれは、美しい声でした。彼が詩篇(イスラームにおいて「ザブール」として知られるもの)を朗唱したとき、彼の周りにある被造物は、彼と共に神を讃えたと伝えられています。また預言者ダビデの特質のひとつとして、動物や鳥の言葉を理解出来たことが挙げられます。
“われは山々を従わせ、かれ(ダビデ)と共に朝夕に讃美させ、また鳥類も、集って、凡てのものが主の命令に服して讃美しつつ常に(主の御許に)帰った。”(クルアーン38:18−19)
預言者ダビデには、別の奇跡も授けられました。彼の手中では鉄が柔らかくなり、彼はそれを望みどおりの形に変形させることが出来ました。当時の世界では鉄が発見されてはいましたが、それを軟化させて応用することはまだ非常に困難なことでした。神はダビデに、盾や鎧の作り方を教えたのです。ダビデによる鎖かたびらの発明以前には、兵士たちは身動きを制限する重い鉄の板を装着しなくてはなりませんでした。
“またわれは、かれ(ダビデ)に(鎖)帷子を作る術を教え、暴力からあなたがたの身を守らせた。それでもあなたがたは感謝しないのか。”(クルアーン21:80)
ダビデは唯一なる神に対する敬虔さと献身によって知られ、隔日で断食をしていました。預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)は、教友たちに次のように語っていたことが伝えられています。「神によって最も愛された断食は、一日おきに断食していた預言者ダビデによ断食である。また神によって最も愛された礼拝は、夜の最初の半分を睡眠し、3分の1を礼拝し、6分の1を再び睡眠した預言者ダビデによる礼拝である。」2
ダビデはイスラエルの民に平安と繁栄をもたらした、公正で誠実な指導者でした。彼は、一日を4つの部分に分けていたと考えられています。その1つ目は、仕事と休憩です。預言者ダビデは国庫から収入を得ていたのでありません。彼は熟練した武具師で、自らと家庭のため武具を製造し販売していました。2つ目は礼拝で、神の偉大さを熟考する時間に費やしていました。3つ目は人々への説教のための時間、そして4つ目は国民の声を聞く時間でした。またダビデは王国内の人々の声をくまなく聞き取るため、複数の代理人も任命しました。
預言者ダビデには、ソロモンという息子が授けられました。“われはダーウード(ダビデ)にスライマーン(ソロモン)を授けた。何と優れたしもべではないか。かれは悔悟して常に(われに)帰った。”(クルアーン38:30)二人は共に、公正で賢明な指導者として知られました。ダビデはイスラエルの民のために王国を築き上げ、預言者ソロモンはそれを黄金期へと導いたのです。
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