イスラームにおける教養(中):知の探求
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 09 Mar 2015
- 編集日時 09 Mar 2015
- プリント数: 56
- 観覧数: 17,659 (日平均: 5)
- 評価者: 0
- メール数: 0
- コメント日時: 0
イスラームは、教養と深く関わっている宗教です。クルアーンが啓示されたときの最初の言葉は「イクラ(読め・学べ・理解せよ)」でした。マッカ郊外の洞窟で、天使ガブリエルは預言者ムハンマドの胸を締め付け、彼が読むよう要求しました。読み書きのできない預言者(神の慈悲と祝福あれ)は、こう答えました。「私は読むことができません!」
“読め、「創造なされる御方、あなたの主の御名において。一凝血から、人間を創られた。」読め、「あなたの主は、最高の尊貴であられ、筆によって(書くことを)教えられた御方。人間に未知なることを教えられた御方である。」”(クルアーン96:1−5)
預言者ムハンマドは読み書きができませんでしたが、教養の重要さは理解していました。当時のアラブ人たちの大半は読み書きができなかったものの、非常に雄弁で、言語への愛着を持っていました。アラブ人たちは、詩、物語り、そして系譜の暗記など、話し言葉を究めています。教養の激励は、自然な進歩なのです。
ムスリムは、クルアーンの言葉を神の言葉そのものであると信じており、それを保持することは最も重要な関心事でした。イスラームの最初期から、預言者の教友たちはクルアーンの言葉を書き留め始めていました。そのために樹皮、動物の革、さらには石なども用いられました。これは教養の新たな時代に寄与したのです。
初期ムスリムの多くはマッカ社会において地位や権力がなく、あるいは奴隷で貧困にあえいでいました。イスラームは彼らが平等と敬意を勝ち取る機会を与えました。預言者ムハンマドは、彼の追従者たちが良い教育を受け、教養があれば、彼の新たな国家は存続し、発展するであろうと賢明にも理解していました。
マッカの抑圧者たちとの最初の戦争であるバドルの戦いにおいて、ムスリム軍は70名の捕虜を得ました。預言者ムハンマドは、捕虜たちの大半が読み書きができたことを知っていたため、ムスリムに読み書きを教えることができた10人の捕虜を解放しています。
新ムスリムたちは、それぞれの人生の中でクルアーンの教えを実践する重要性を理解し始めました。その当時は現在と同様に、信仰者が周りの世界を見回し、創造の驚異について熟考し、創造主の偉大さを理解するには教養が必要でした。信仰者たちは、クルアーンを読んで神と親密になろうと心がけます。彼らは知を求めて自らの信仰を強化させます。彼らは真の服従と確信によって神を崇拝するため、そうした知識を実践に移すのです。
“また知識を与えられている者たちは、この(クルアーン)があなたの主からの真理であることを知り、心を謙虚にしてそれを信じる。本当にアッラーは、信仰する者たちを正しい道に導かれる方である。”(クルアーン22:54)
ムスリム学者たちによって細心の注意と共に、念入りに記録された預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)の言行録において、彼は追従者たちが知識1の探求をするよう激励していたことが伝承されています。人が知識を求めて道を歩むのであれば、神はその人物のために楽園への道を容易なものにする2と彼は述べています。また彼は、知識とは死後も続く3つの善行のうちの1つ3であるということも述べています。
人間には頭脳と知性があります。私たちにはまた理性の力、そして知識を受け入れるか拒絶するかの自由意志もあります。神は知識を得るための道具とともに人間を創造されました。かれは人類の父アダムに、あらゆるものの名前を教えました。アダムには言語能力、またいかに知識を応用すべきか、そして計画を立てて決断し、目的を達成する能力が与えられたのです。私たちアダムの子孫は、地上に繁栄し、最善の方法で神を崇拝することのできるよう、それらの能力を受け継いだのです。
“かれはアーダムに凡てのものの名を教えた。”(クルアーン2:31)
“アッラーはあなたがたが何も知らない時、あなたがたを母の胎内から生まれさせ、聴覚や視覚や心(知能感情)をも授けられた。必ずあなたがたは、感謝するであろう。”(クルアーン16:78)
イスラームにおいては、知識の探求が重要視されます。預言者ムハンマドは、その信徒たちに勉強会に参加するよう激励し、またクルアーンの教師を周辺部族や遠方の諸都市へ派遣しています。彼は信徒たちと座り、イスラームの基本を教え、彼らの朗誦するクルアーンを慎重に聞きつつ、たびたび涙を流したものでした。預言者ムハンマドは、クルアーンを学んだ後に他者に教える者が、彼の信徒たちの中でも最善の者であると述べていました4。
初期のムスリムたちは、クルアーンやイスラーム学を学べる学校を設立しました。当初、イスラームは迫害の恐れから秘密裏に実践されており、アルカムという人物の家でイスラーム知識が伝播されていました。21世紀の現在も、最初のイスラーム学校を記念し、ムスリム世界の各地ではダールル=アルカム(アルカムの家)という名の学校が多々あるのです。
イスラームは知識、教育、教養、そして知的探求を徳の高いものとみなします。イスラームの歴史を通して、学校や大学、図書館などの設立は数え切れません。ムスリムたちは教育論は確立させ、カリキュラムを設定し、文学や芸術を追求し、知の探求をさらなる高みに引き上げました。
第3部では教育論、そして学校や教育センターの設立について見ていきます。
コメントを付ける