元英国外交官チャールズ・ル・ガイ・イートン(5/6)

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説明: 哲学者/作家による真実の探求は、信仰と行為を調和させんがための恒常的な葛藤に悩まされました。第5部:カイロでの仕事。

  • より ガイ・イートン
  • 掲載日時 22 Oct 2012
  • 編集日時 22 Oct 2012
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彼は正しかったのです。私自身も、マイヤーズのとき、そしてそれ以降も多くの機会で経験した、理念を紙に書き留めるという著者としての行為と、実際の人間生活における個人とのギャップという、人間性における大いなる矛盾に直面したです。イスラームによる目的の一つに、性格における異なる要素における完全なバランスを達成し、それらを同一の真っ直ぐな道の上を歩ませるために同じ方向を向かせ、お互いを協調させるというものがあります。西洋においては、全くバランスが取れておらず、他の全ての面を犠牲にして人格の一面のみを発達させている人々を目にするのは珍しいことではありません。英知について語ったり書いたりすることは、その達成に取って代わるものではないと私は気づきはじめました。そういったことを語ったり書いたりする人々は、その内容について真摯であることから、そのこと自体は必ずしも偽善とは言えないでしょう。つまり、それは彼らの中の最も良き部分を表現しているのであり、彼ら自信がそれにふさわしいとは限らないということなのです。

2年半後、家庭問題から私は英国に帰国しました。私の著作を読んで手紙を出してくれた人々の中には、ゲノンの著作に精通し、彼を通してイスラームに改宗した二人の男性がいました。私はロンドンで彼らに会いましたが、彼らは私が探し求めているものは、インドや中国ではなく、あなたの身近に、そしてアブラハムの伝統の中にあるのだと語りました。そして私自身が伝道することをいつ実践し、「精神的な道」を歩み始めるつもりなのかと尋ねてきました。彼らは穏やかに、且つ確固として、私がすでに理論上は知っていることを自らの人生に適用すべき時が来たのだ、と言うのです。私は現世的冒険の可能性が尽きる老年期までは彼らのアドバイスに従うつもりはなかったので、親切に、且つつかまえどころのない受け応えをしましたが、それ以降、より関心深くイスラームについて読書するようにはなりました。

この関心は、事際に中東で働くことによってイスラームに対する強い偏見を育んでていた私の親友の不承認を招きました。この「粗野な宗教」が精神的な面を有するという概念は、彼にとってあり得ないことでした。それは見せかけの形式主義、非合理的な禁忌への盲目的追従、礼拝の繰り返し、偏屈な頑迷さ、そして偽善以外の何でもないと彼は私に保証しました。彼は私を確信させるために、ムスリムによる実践例のいくつかを述べました。その中で私が覚えているものは、病院で死の床にある若い女性が、マッカの方角を向いて死ぬことの出来るよう、苦しみながらも起き上がって最後の力を振り絞り、ベッドの方向を変えたというものがありました。私の友は、彼女の「愚かな迷信」のために自らを苦しめてまでそうさせた行為にひどく胸をむかつかせていました。しかし、私には逆にそれが素晴らしい逸話に聞こえました。私が想像し得るいかなる精神状態をも遥かに勝るその女性の信仰心に、私は心打たれたのです。

当時は職にも就けず、ひもじい暮らしをしていました。私はカイロ大学の英文学の助教授を含め、求人のあったほぼすべての職に応募しました。そのときは馬鹿げたことをしたものだ、と自分でも思っていました。私はケンブリッジ大学で歴史の学位を取ったのであり、19世紀以前の文学については何も知らなかったのです。どうして、無資格の私を彼らが雇おうというのでしょうか?しかし、彼らは選考の末に私を雇ったのです。1950年の10月、私が29歳のとき、イスラームへの関心が根を生やしていた丁度その頃、私はカイロへと旅だちました。

私の同僚には、エジプトに居を構えていたマーティン・リングスという英国人ムスリムがいました。彼はゲノンの友人、また私がロンドンで話した二人のムスリムの友人でもあり、私がそれまで会ったことのある誰とも全く異なる人物でした。彼は、私がそれまで理論上のみ存在すると思い描いていたものの生きた化身で、私は遂に現存するそれとめぐり逢うことが出来たのです。彼は郊外の伝統的住居に住んでおり、毎週のようにリングス夫妻を訪れることは、近代的カイロの喧騒からの時間を超越した逃げ場であり、そこでは内面と外面が分け隔てられることもなく、私が慣れ親しんだ世界の現実とされるものは、陰のような薄い存在だったのです。

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