祝福された家族の逸話(前半):預言者ザカリア

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説明: 預言者ザカリアは、イエスの母マリアの保護者であり、ヨハネの父でした。また彼はイエスと同時代に生きた預言者でした。

  • より アーイシャ・ステイスィー
  • 掲載日時 30 Jul 2012
  • 編集日時 05 Aug 2012
  • プリント数: 123
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Stories_of_a_Blessed_Family_(part_1_of_2)_001.jpgこれは、神を愛し、畏れたザカリアという名の老人の逸話です。彼は神のご満悦を得るためだけに知識を得て、それを教えることに人生を費やしました。クルアーンは彼について、第3章と19章の中で、キリスト教のルカの福音書に似た逸話を伝えています1。ここでは、この祝福された男性について、クルアーンがどのような記述をしているのかについて見ていきます。なぜなら、ムスリムのクルアーンに対する信念は、啓示された当時から変わりませんが、それ以前の啓示は紛失、改変、歪曲を被ったからです。

“(これは)あなたの主が、しもベのザカリーヤーに御慈悲を与えたことの記述である。かれが密かに請願して、主に祈った時を思え。かれは言った。「主よ、わたしの骨は本当に弱まり、また頭の髪は灰色に輝きます。だが主よ、わたしはあなたに御祈りして、御恵みを与えられないことはありません。”(クルアーン19:1−4)

預言者ザカリアは、預言者イエスと彼の母マリアと同じイムラーン家の一員でした。若きマリアがエルサレムの崇拝の場へ向かったとき、神はその英知と恩寵によってザカリアを彼女の保護者として任命しました。彼は毎日マリアのもとを訪れ、彼女の必要を満たしていました。マリアによる神への奉仕はザカリアを感嘆させ、また彼は彼女の場にもたらされていた食糧を見つけて驚きました。そこには、夏には冬の果物、冬には夏の果物があったからです2。マリアがいかにしてそれらの食糧を手に入れたのかをザカリアが尋ねると、彼女は真の供給者である神がそれをお恵みになったと答えました。マリアはこう言ったのです。

“「これはアッラーの御許から(与えられました)。」本当にアッラーは御自分の御心に適う者に限りなく与えられる。”(クルアーン3:37)

マリアによる神への完全なる帰依と信仰をザカリアが見い出したとき、それは新たなる概念へと彼の目を開かせました3。それは私たちの必要性がいかに圧倒的であったり、取るに足らないものであれ、神は常にお聞きになり、お答えになるということです。このことは熟考に値する、非常に重要な概念でした。神は誠実なしもべに対し、限りなくお与えになるのです。マリアは季節外れの果物を享受し、ザカリアは、彼自身と彼の妻が子を宿す年齢をとうに過ぎているにも関わらず、人間的基準としては不可能なことを祈願しました。神の恩寵はいかなる制限にもとらわれないものであり、可能性は限りなく存在するのです。ザカリアはそのことを、彼の被後見人であるマリアから学びました。

ザカリアは一人、主に呼びかけ、自らが老齢に達し、髪は白髪となり、妻も老齢で不妊であっても、神のご満悦を得るような跡継ぎを望んだのです。ザカリアは彼の後を継ぐことの出来る息子を欲しましたが、貧しいながらも富は望みませんでした。彼は預言者の血筋を継承する息子が、彼が人生を通して習得した知識を伝え広めることを望みました。神は直ちにそれに応え、こう告げたのです。

“それからかれがなお聖所で礼拝に立っていた時、天使がかれに呼びかけた。「アッラーからヤヒヤー(ヨハネ)の吉報をあなたに授ける。その子はアッラーの御言葉の実証者となり、尊貴、純潔で正しい人々の中の預言者となろう。」”(クルアーン3:39)

このクルアーンの節における「神の御言葉」には特別な意味が含まれています。すなわちそれはイエスのことであり、なぜなら彼は神による「在れ」という言葉によって創造されたからです。ザカリアの息子ヨハネは、イエスの教えを信じ、従った者たちの一人でした。

ザカリアがこの驚くべき知らせを受け取ったとき、彼は礼拝に立っていたところでした。彼の年齢と妻が不妊であることを考慮しても、如何にそれが可能であろうか、というのが彼の反応でした。神はマリアが学んだ教訓を立証したのです。“このように、アッラーは御望みのことを行われる。”(クルアーン3:40)

それがいかに彼と彼の妻に起こり得るかを不思議に思ったザカリアは、御徴を求めました。神はそれに対し、彼が身振り手振りすること以外に会話をする能力を失うことを告げました。ザカリアは神への称賛と唱念に時間を費やすことを指示され、崇拝の場から離れると、話すことが出来なくなっていました。

クルアーンは、預言者ザカリアと彼の妻が善行をし、畏れと希望、そして謙虚さをもって神へと呼びかけたため、神は彼らの老齢にも関わらず子供という報奨を与えたことを述べています。

“それでわれはこれに応え、かれにヤヒヤー(ヨハネ)を授け、また妻をかれに相応しくした。かれらは互いに競って善行に勤しみ、また希望と畏れをもって、われに祈っていた。われに対し(常に)謙虚であった。”(クルアーン21:90)

彼は普通の子ではありませんでした。ヨハネは幼少時から英知を授けられ、神によってトーラーに忠実であるよう命じられています。彼は思いやりのある人物で、人々に対し同情や慈悲の心を示すことが出来ました。神はヨハネを誠実な者とし、罪のない者としたのです。

“「ヤヒヤーよ、啓典をしっかりと守れ。」(と命令が下った)。そしてわれは、幼少(の時)かれに英知を授け、またわが許から慈愛と清純な心を授けた。”(クルアーン19:12)

老夫妻による切実な祈願が神によって受け入れられたことにより、それは全人類への価値ある教訓となりました。それは、神の恩寵は無限だということであり、かれこそが供給し、扶養する、唯一なる御方であるということなのです。



Footnotes:

1 ルカ1:5−80

2 イブン・カスィールの著書「諸預言者の物語」より。

3 イブン・カスィール

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祝福された家族の逸話(後半):預言者ヨハネ

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説明: 預言者ヨハネの性格、使命、そして彼の家族であるイムラーン家による相互扶助について。

  • より アーイシャ・ステイスィー
  • 掲載日時 03 Sep 2012
  • 編集日時 10 Sep 2012
  • プリント数: 119
  • 観覧数: 15,566
  • 評価: 3.4 から 5
  • 評価者: 131
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Stories_of_a_Blessed_Family_(part_2_of_2)_001.jpgイエス、マリア、ザカリアとその息子ヨハネは皆、ダビデの末裔であるイムラーン家という同じ名家の一員でした。神の言葉であるクルアーンによると、彼らは誠実で、神へ真に帰依して崇拝していたことが分かります。

“またザカリーヤー(ザカリア)、ヤヒヤー(ヨハネ)、イーサー(イエス)… それぞれみな正義の徒であった。”(クルアーン6:85)

“…そしてわがしもべである堅固の人ダーウード(ダビデ)を思え。本当にかれは、(主の)命令に服して讃美しつつ常に(主の御許に)帰った。”(クルアーン38:17)

“かの女(マリア)は、主の御言葉とその啓典を実証する、敬虔な(しもべの)一人であった。”(クルアーン66:12)

キリスト教徒たちの間では、ヨハネは「洗礼者」として知られます。しかし、クルアーンと預言者ムハンマドの言行録は、どちらもヨハネを洗礼者として言及していません。ヨハネの使命とは、イスラエルの民に対して神との契約を思い起こさせるものだったのです。彼は他のすべての預言者たちと同じこと、つまり完全なる帰依をもって唯一なる神への崇拝を命じたのです。

奇跡の子

預言者ザカリアにとって、子を授かるすべての希望がなくなった老齢において、神は彼とその妻に奇跡の子を授けました。その男の子は、世界で初めてヨハネと名付けられました。神ご自身がその命名を行ったのです。

“アッラーからヤヒヤーの吉報をあなたに授ける。その子はアッラーの御言葉の実証者となり、尊貴、純潔で正しい人々の中の預言者となろう。”(クルアーン3:39)

私たちはクルアーンから、預言者ヨハネが幼い時から英知を授かっていたことを知ります。また複数の典拠から、彼が外で動物たちと遊ぶのを好む、静かでおっとりした勉強好きな子だったことが分かっています1。ヨハネは敬虔で知的な青年に育ちました。彼は荒野、あるいは砂漠の中で簡素な生活をし、神への礼拝と唱念に勤しんだと伝えられています。彼は周囲の人々だけでなく、全人類に対して思いやりと慈悲に溢れた心を持っていました。イスラーム学者たちは、ヨハネは神への畏敬の念、そして愛情によって涙し、その涙は彼の頬に跡が残るほどだったとしています。

ヨハネとイエス

ヨハネは神によって不屈の精神と力が与えられており、自らの世俗的欲求を抑制することが出来ました。彼は人々に対し、トーラーの法に立ち返るよう不断の呼びかけをし、従兄弟であるイエスの使命を支持しました。ヨハネの使命の一部には、イエスの教えを信じ、支持することが含まれていました。“…アッラーの御言葉の実証者となり…”(クルアーン3:39)ヨハネは従兄弟であるイエスのことを「神の魂」として言及し、奇跡的創造としての預言者イエスの存在を強調したのです。

預言者ムハンマドにまつわる真正の言行録(アフマド、ティルミズィーなど)においては、預言者ヨハネとイエスがイスラエルの民を再び正道に導くという彼ら共通の使命について、協議をする逸話があります。預言者ムハンマドによると、預言者ヨハネはイスラエルの民を一同に集め、彼らが神の戒律に従うよう嘆願したとされます。それはつまり、唯一なる神以外には何者をも崇拝せず、礼拝と斎戒をし、喜捨を施し、神への唱念に時間を費やすというものです。

神は預言者ヨハネに対し、特別な祝福を授けました。“かれの生誕の日、死去の日、復活の日に(再び)、かれの上に平安あれ。”(クルアーン19:15)平安、安寧、安心、満足感は、人間に対して与えられる最大の祝福です。それは、神によって与えられた導きに従うことの結果であることは明らかです。

クルアーンと預言者ムハンマドの真正の言行録は、ヨハネの死の詳細については言及していません。しかしながら、彼はトーラーにおいて啓示された神の法に毅然として従ったことから、虐待や迫害を受けており、それが死につながったことが分かっています。ヨハネの人生は葛藤と努力に満ちたものでしたが、彼は神の教え(神のみを崇拝すること)にしっかりと従い、その信条を貫いて死んだのです。

イムラーン家は人類にとって、暗闇を照らす明かりでした。彼らの献身は比類なきもので、彼らの相互扶助は私たちにとっての模範です。両親は子供たちの現世での喜びではなく、来世の行方に気をもみ、子供たちはそれぞれが神に命じられたよう両親や年長者に尽くし、敬意を示し、思いやりをもって接します。この祝福された家族は、真の献身をもって神を崇拝し、神の法を最優先したのです。神はこう述べます。

“だが信仰して善い行いに励む者には、かれは十分の報奨を与え、なおその恩恵を増して下される。だが軽んじて高慢な者には、かれは懲罰を科され、アッラーの外にはどんな守護も援助も見いだすことは出来ない。”(クルアーン4:173)

マリアは敬虔な女性で、イエスは神の言葉、そしてヨハネは高慢や不従順な者ではなく、ザカリアは主を讃えました。預言者ダビデの子孫である彼らは、祝福されたイムラーン家の一員で、彼らは人の人生における模範的存在だったのです。彼らが努力したように私たちも努力し、彼らが信仰したように確信をもって信仰し、彼らが神に服従したように私たちも完全な服従をするのであれば、審判の日、私たちも神の寛大さによって誠実な者として数えられることでしょう。



Footnotes:

1 イブン・カスィール。

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