イエスの母マリア(その1):マリアとは誰か?
説明: キリスト教徒は彼女のことをイエスの母マリアとして知っているでしょう。ムスリムも同様に、彼女のことをイエスの母、またはアラビア語でウンム・イーサーと呼びます。イスラームではマリアのとこをしばしばマルヤム・ビント・イムラーン(イムラーンの娘マリア)と呼びます。この記事では、ザカリアが彼女を養女として迎え、彼女が寺院で働くことになった背景を見ていきます。
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 25 Jul 2011
- 編集日時 25 Nov 2012
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マリアがイスラームにおいて、最も高く評価され尊敬されている女性であり、クルアーンで重要視されている女性の一人だと知って驚く人も少なくないでしょう。マルヤムはクルアーン19章の題名であり、13章はイムラーン家という名が付けられています。イスラームにおいて、イムラーン家はとても高い価値を置かれています。クルアーンはこう伝えています:
“本当にアッラーは,アダムとノア,そしてアブラハム族の者とイムラーンー族の者を,諸衆の上に御選びになられた。”(クルアーン3:33)
神はアダムとノアのことは個人的に選びましたが、アブラハムとイムラーンに関してはその一家を選びました。
“かれらは,一系の子々孫々である。”(クルアーン3:34)
イムラーン家はアブラハムの子孫であり、アブラハム家はノアの子孫であり、ノア家はアダムの子孫です。イムラーン家にはキリスト教の教義において著名かつ尊敬されている多くの人々がいます。預言者ザカリアや預言者ヨハネ(洗礼者ヨハネ)、預言者イエスとその母マリアがそうです。
神はマリアを全世界の女性の上に置かれました。かれはこう仰っています:
“天使たちがこう言った時を思い起せ。「マルヤムよ,誠にアッラーはあなたを選んであなたを清め,万有の女人を越えて御選びになられた。」”(クルアーン3:42)
また第4代カリフのアリー・ブン・アビー・ターリブはこう言っています。
“私は、神の預言者が、イムラーンの娘マルヤムは最も優れた女性である、と言ったのを聞きました。”(サヒーフ・アル=ブハーリーによる伝承)
アラビア語で、マルヤムとは神の仕女のことを指し、イエスの母マリアは産まれる前から神に仕えていたのです。
マリアの生誕
聖書にはマリアの生誕について詳しく書かれていませんが、クルアーンには、イムラーンの妻が彼女のまだ産まれていない赤ん坊を神に仕えさせようとしていたということが書かれてあります。マリアの母、またはイムラーンの妻はハンナといいました[1]。 彼女は預言者ザカリアの妻の妹でした。ハンナと夫イムラーンは子供が授かれないものと信じていましたが、ある日ハンナが誠実で心のこもった祈念をし、子どもを授かれるのならエルサレムの神の家に仕えさせると誓いました。神はハンナの願いを聞き入れ、ハンナは懐妊したのです。ハンナはこの素晴らしい知らせを知ったとき、神に祈りこう言いました。
“イムラーンの妻がこう(祈って)言った時を思え,「主よ,わたしは,この胎内に宿ったものを,あなたに奉仕のために捧げます。どうかわたしからそれを御受け入れ下さい。本当にあなたは全聴にして全知であられます。」” (クルアーン3:35)
ハンナの神への誓いには、学ぶべき教訓があります。その一つが子孫に与えるべき宗教的教育です。ハンナは世俗のことは一切気にせず、自分の子どもが神に近しい者であり、神に仕える者であるように努めました。イムラーン家のような神の僕たちこそ、私たちがお手本とするべき両親の姿です。神はクルアーンの中で何度も、かれこそが私たちを養う存在であり、私たち自身と私たちの家族を地獄の業火から守るべきだと警告しています。
ハンナは祈りの中で、彼女の子どもが世俗的な仕事には携わらないように願いました。彼女の子どもが神の僕になることを約束することで、彼女は子どもの自由を守ったのです。自由とは、すべての人間が手に入れようと努力する人生の性質であり、彼女は本当の自由とは、神への絶対服従によって得られるものだと理解していたのです。これこそが、彼女がまだ産まれていないその子どものために願ったことなのです。ハンナは彼女の子どもが、ほかのいかなる者の奴隷、また自らの欲望の奴隷などではなく、神だけの僕であってほしかったのです。時期がきて、ハンナは女の子を産み、彼女はまた神に祈りを捧げてこう言いました:
“それから出産の時になって,かの女は(祈って)言った。「主よ,わたしは女児を生みました。」アッラーは,かの女が生んだ者を御存知であられる。男児は女児と同じではない。「わたしはかの女をマルヤムと名付けました。あなたに御願いします,どうかかの女とその子孫の者を)呪うべき悪霊から御守り下さい。」”(クルアーン3:36)
ハンナはその子をマリアと名付けました。彼女の神への誓いについて、彼女はジレンマに陥りました。祈りの家に女性が仕えることは、許されていなかったからです。マリアの父イムラーンは彼女が産まれる前に亡くなっていたので、ハンナは義理の兄ザカリアに頼りました。彼はハンナを慰め、神は彼女が女の子を身ごもったこともご存知だということを理解させました。この女児マリアは、神の創造物の中でも最高のものの一人でした。預言者ムハンマドは、子どもが産まれるときに泣くのは、悪魔が赤ん坊を突き刺すためなのだ、と言いました。[2]これは悪魔の人間に対する大きな敵意の象徴ですが、二つの例外があります。悪魔はハンナの願いゆえに、マリアも、その息子イエスのことも突き刺さなかったのです。[3]
マリアが祈りの家に来たとき、誰もがこのイムラーンの敬虔な娘の面倒を見たがりました。その当時の慣習にならって、その権利のくじ引きが行われ、神は預言者ザカリアが彼女の後見人になるようにしました。
“それで主は,恵み深くかの女を嘉納され,かの女を純潔に美しく成長させ,ザカリーヤーにかの女の養育をさせられた。”(クルアーン3:37)
預言者ザカリアは神の家に仕える、賢明で知識のある男性であり、教えを説くことにとても熱心でした。彼はマリアのために部屋を建て、彼女が人目にふれず神を崇拝し、日常の用事を済ませることができるようにしました。預言者ザカリアは後見人として、マリアを毎日訪ねていましたが、ある日彼女の部屋に新鮮な果物があるのを見て驚きました。彼女の部屋には、夏には冬の果物が、冬には夏の果物が置いてあったと伝えられています。[4] 預言者ザカリアは、それがどうしてこの部屋にあるのか尋ねました。マリアは、神こそが糧を与えてくれるのだ、と答えました。彼女はこう言いました、
“「これはアッラーの御許から(与えられました)。」本当にアッラーは御自分の御心に適う者に限りなく与えられる。”(クルアーン3:37)
彼女の神への献身ぶりは未曾有のものでしたが、彼女の信仰は今まさに試されようとしていました。
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